Cから始まった時間

還暦を迎え、これまでのこと、これからのことを毎日書き残したいと思います。

雨の桜の日、拍手をしていた。

雨の桜を撮った。
青空があると確かに映える、美しい。

でも、

雨の桜にはまた格別の美しさがある様に思う。
いろいろなものが雨で流され
すっぴんの美しさには勢いを感じる。


雨の桜の思い出


長男の大学の入学式
そのころカメラに凝っていて
一眼レフのカメラを携え
ひとりで大学の門をくぐった。

彼には伝えずに‥


長男が夢をかなえたいと希望した大学は
到底手が届くレベルではなかった。
それでも受験することは許してあげたかった。
滑り止めに受かったものの
もう一年チャレンジさせてほしいと言い
それを許した。
結果は二浪。


最後と決めて臨んだ年も
すべてだめだったと連絡があった。


なんと言葉をかけるべきか、本当に悩んだ。

正直、大学なんかどうでも良かったけれど

ストレートに言うわけにもいかない。

言葉を知らない自分にこそ、絶望していた。


数日後自宅に封書が届き
開けてみたら合格通知だったと
職場に彼から連絡があった。

嬉しかったのだろう。


…受かってたのか。
 この数日間の母の絶望をどうしてくれる

 つもりだろうか。


入学式、

彼は180センチを超えている身体を

少し俯きがちに桜が浮いた水溜りを避けながら

会場へ向かって歩いていた。


一言も声をかけるタイミングなく

帰りには同じように桜の水溜りを避けながら

母もひとり歩いた。


そうか、彼と同じ道を歩いてみて

同じ景色が見たかったのか。


一眼に残っていた写真は

水溜りを写した写真ばかり。


雨の桜は、私にとって

歩いてきた道のりを噛みしめる、

彼の長かった宅浪を確認し、

決して万歳はできないが

ささやかな拍手を送れる日になった。