Cから始まった時間

還暦を迎え、これまでのこと、これからのことを毎日書き残したいと思います。

冬の防寒


ユニクロのウルトラダウンコートと
この古びたフードのコート2枚を着まわしている。

車通勤となると、ロングのコートはあまりいらない。
年齢のこともあり、重くなく着やすいものをと思ってしまう。


清潔にさえしていればよいと思い、近頃は持ち物も減らしている。
親の家を片付けたときに本当に苦労したから
せめて自分は整理して旅立ちたいと思う。
年を取ってからでは気力がなくなるということを
実感もした。


でもこの古びた物は捨てられない。
母からもらった物だからという理由と
少しばかりの思い出があるから。


そういえば最近思い出話が多い。
このブログを書き始めたのは
そんなことを思い返したいのと
もうひとつは、いつか娘がここを発見して
娘に記録を残せるかもしれないと思ったから…


話を戻そう。
このコート、ある日母が
「これ着る?」といって自分が着ていたものをくれた。
自分に似合わなくなったとおもったのか
もっと他に好きなものができたのかはわからない。


ある日、私が来ているのを見て
「それ私のじゃない?盗ったの?」と言った。


驚いた。
すぐに言葉が出てこなかった。


「これ着てるとみんなに似合うといってもらえるんだ。
 着たいのなら返すけど…」と言うと
ポっと表情が緩み
『そうなの、それはうれしいね。じゃ、大事に着てね』と
笑った。


認知キャラバンメイトの活動で何度か講演をしてはいたが
実生活で起きることを、初めて経験した。
あえて「盗った」という言葉に反応せずに対応できたこと思えば
そんな活動もすこしは役に立ったのかと思った。


それと同時にこれからの不安がよぎったことを
今でもはっきり覚えている。


それから8年ほどたって母は旅立った。
実際の介護もどきは約一年
認知機能の衰えで手がかかった期間は本当に短い
立派な人生であったとはいいがたいが
彼女らしい人生をまざまざと最後まで
子らに教えながら逝った人生だったと思う。