Cから始まった時間

還暦を迎え、これまでのこと、これからのことを毎日書き残したいと思います。

もう一度食べたい

北鎌倉駅近く 光泉のいなりずし


一時期 小川糸さんの作品をすべて読みつくした。


小川糸さんの作品はどれも本当にやさしくあたたかく
ライオンのおやつなんて何度読んだことか…

でも 根っからの食いしん坊
食に関するフレーズや情景にとても弱い。
この本には本当に参った。
「ツバキ文具店の鎌倉案内」


いざ鎌倉!ってこの時に使うのではないかと
真面目に思ったほど。


数年前、マラソンのオリンピック代表を決める大会というものが初めて開催され
その応援がメインではあるものの、ぜひとも鎌倉に足を延ばそうと。
道中も文庫本を肌身離さず持ち歩き
ポストイットで行く順番までつけて用意した。


念願かなった。

この味はすごかった。
シンプルなだけに、余韻が残り続けてしまった。
これ以上のいなりずしに出会ったことはないし
多分この先もないと思う。


この味と結びつく思い出
その代表を決める大会
アップのときに、応援する選手のコーチに偶然会った。
「調子は悪くないですよ。でも周りの選手がすごすぎる」と…
そうだよね。


あれは38キロ付近だったか
仕掛けどころを探っている選手たちに刺激を与えるかのように
彼が仕掛けを誘導するような動きをした。
ちょうどそのタイミング
その地点で応援していた私たちは
いつものように彼を「君付け」で呼んで応援した。
その声に反応したのか、急に彼がきょろきょろと沿道を
見回した。
大事な仕掛けどころでもあるのに、
いつも応援に行くと顔を見てうなずいてくれるあのしぐさを
こんな大きな大会でも彼は変わらずに
そうやって答えてくれるのか…
予想では注目選手として名前すら上がらなかった彼
この大会でも素晴らしい、とてつもない功績を
また残してくれた。


その思いと、このいなりずしの思い出はつながってるのかもしれない。
彼のどこまでも心根の深いやさしさ、人を思いやることに1ミリの迷いもない
言葉や態度にいつも感心させられた。


鎌倉には必ずもう一度行く、それは決めている。