Cから始まった時間

還暦を迎え、これまでのこと、これからのことを毎日書き残したいと思います。

生きてさえいてくれればと

仕事中に見慣れない固定電話からの着信
普通は出ない
虫の知らせか、パソコンでその電話番号を検索したら
住宅供給公社から。
長男が何かやらかしたか…


折り返しかけると
集合住宅の郵便ポスト
息子が自分のところのダイヤル錠かなにかを
一階上の方のところに間違ってかけたらしい


おっちょこちょいの彼のやりそうなことだ
しかし、大型の集合住宅やマンションのポストを見ると
自分も少し自信がない


公社は何度も息子に電話したらしいが出ない
「お仕事中に何度も電話するのも気が引けるので
 緊急連絡先のお母様にさせて頂きました」とのこと
私も仕事中ではあるが
相手先もお困りだろうから致し方ない


息子に電話するも、出ない。
メッセージを送るも返信なし。


一日中、気もそぞろで
仕事どころではない。


「自室で倒れてなどいないか」
コロナ禍のご時世である
どのような事も想定できる


どんどん不安が募り
役所内で子どもの鳴き声が聞こえれば
彼の小さい頃のことに思いが飛ぶ


本当に彼にはきつい子育てをした
そのいろいろなシーンが蘇り
いつかちゃんと詫びなくてはいけないと
半分泣きそうになった。


簡単な夕食を済ませ、片道2時間弱をかけて
彼の住む集合住宅へ向かおうとした時
連絡があった。


「あ~良かった。生きてたわ」


彼に電話を掛けた理由が
このころにはすでに
生存確認にすり替わっていた。


いつも娘や次男は笑う
「生きていてくれさえいればいい」
なんと基準を下げたことかと。


それでも、生きていてくれたらいい。
ほとんどの親の想いは一つではないだろうか。


私より先に逝かないでくれたら
それが最高最大の親孝行

そんな思いの中
紫色の花は、すこし心を強くしてくれた。